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決まり事は少ない方がいい

時代と共に変化する「おいしい」に
敏感に、自由に対応

時代と共に変化する「おいしい」に 敏感に、自由に対応

「おいしい」と思う感覚は人それぞれですが、時代と共に変化しているので年代によっても違うんですよね。例えばフレンチだと、バブル期のフレンチは濃かったんです。それこそ、フランス産のワインが欠かせないぐらい、濃厚なクリームやソースが「おいしい」とされていたんです。だから、今50歳以上の方の中には、フレンチというと「味が濃い」という印象が残っている方もいらっしゃいます。でも、今の若い人たちにそういう印象はほとんどありませんね。現在フレンチは、ソースが少なめのイタリアンと近づいてきていて、境目が分からなくなってきているんです。それは、それぞれが日本人の「おいしい」感覚に近づけていった結果だと思うんです。

「こうしなければならない」がないので
時代・好みに合わせた料理を追求できる

「こうしなければならない」がないので 時代・好みに合わせた料理を追求できる

アルカンシエルの料理は決まり事が少ないので、料理長の裁量で変化に敏感に対応できるんです。時代の変化はもちろん、お客様…特に主賓の方の出身地・年齢・職業によって、メニューを変えています。婚礼料理では、列席いただいた方々にお礼が伝わらなくてはなりません。そこで、その方々に「楽しかった」「おいしかった」と言っていただけるような料理をコースの中に一品でも組み込めるよう、提案しています。

価格以上のおいしさを追求

料理長が存在する意味は
価格以上の料理を提案すること

料理長が存在する意味は 価格以上の料理を提案すること

おいしいという感覚って、人それぞれで難しいです。お客様が感じる「おいしい」は、私が考える「おいしい」とは違うこともあります。土地によっても違うし、お客様によっても異なります。だからこそ、アルカンシエルグループでは、名前が同じ料理であっても、各店舗によって作り方もレシピも変更が可能です。全国で料理もレシピも食材も統一しているのであれば、料理長である私はいらないかもしれません。料理を“作れる”だけでいい。お客様の「おいしい」感覚をキャッチして、創り上げていく。それこそ私たち料理人が存在する意味だと考えています。
極端な話、一番いいコースを選べる予算がある方に料理長はいらないですね。それだけで、お客様へお礼の気持ちは伝わりますから。私が必要なのは予算があまりない方と、色々とこだわりたい人。コスパが大事だと考えています。料理の価格以上においしい味わいを提供するのが私の仕事なんです。

提案する料理だけでなく
打合せもカップルによって変わる

提案する料理だけでなく 打合せもカップルによって変わる

料理説明だけであれば料理人でなくてもできるんです。料理長が必要なのは、その先。「自由度」とか「何でもできますよ」と言葉で言うのは簡単なんですが、お客様に合わせるというのは結構大変なんです。レストランと披露宴の一番の違いは、食べたいものをお客様自身が選べるかどうか。披露宴に列席されるお客様は食べたいものをオーダーすることができないので、新郎新婦からその情報をうまく引き出すのが私たちの仕事なんです。

誰に味わってもらうのか?が鍵

ふたりの後ろにいるお客様へ
おいしい+お礼を伝える料理を

ふたりの後ろにいるお客様へ おいしい+お礼を伝える料理を

披露宴の料理は、お腹を膨らませることが狙いじゃないですよね。ご祝儀をいただいている親戚、友人、主賓にお礼を伝えるための最も重要なものが料理なんです。20歳の女の子と60歳の主賓と同じ料理でお返ししなきゃいけないので、難しいのですが…。そこで、どんな料理を振る舞えば喜んでもらえるのか。おふたりが招くゲストの方々はどんな方なのか?というのを見極める打合せは、とても大事にしています。お花やケーキは「こうしたい」というイメージが強いので自分で探しにいけますが、料理は自分たちが招くゲストにふさわしい料理を探しにいくことは難しいですよね。だから、おふたりがどうやってお返ししたいかという想いをお聞きして提案していくことで「コレだ!」というものを一緒に探していきます。

提案する料理には
出身地が大きなヒントに

提案する料理には 出身地が大きなヒントに

おふたりがどうしたらいいのかわからない時は、おふたりの年齢や職業、出身地、兄弟のことや挨拶してくれる人のことをお聞きしています。大企業の社長が主賓ならば、その方が驚くような高級食材を提案したり、若いおふたりでお客様も若い方が多い場合は、ボリューム重視にすることも。メニューを考える時、特に意識するのはお客様の出身地です。地方によって、伝わる料理と伝わらない料理があるんですよね。中部より西の披露宴にエビがよく使われるのは、親御さんがエビを入れてお返しをしたい可能性があるからなんです 牛肉のグレードをあげるよりも、エビを入れた方が豪華なメニューに見えるという方が多いので、そこは意識しますね。逆に、避けた方がいい素材も明確になります。主賓が北海道出身ならば、海のものはおいしいものを食べ慣れているので、敢えて海外から輸入して違いを出すこともあります。

やりすぎは決して許されない

塩加減も焼き加減も
「おいしくなくなる」限界ラインがある

塩加減も焼き加減も 「おいしくなくなる」限界ラインがある

料理を作るうえでキッチンスタッフ全員で守っていることは、塩加減も焼き加減も「やりすぎないこと」。お肉や魚が塩辛かったら、その料理はアウトなんです。和食は塩がなくても完結する料理が多いんですよね、実は。日本人にとってあまり馴染みがなかったせいか、塩は引っかかる味覚のひとつなので神経質になります。焼き加減についても、お肉や魚、野菜も焼きすぎ、火の入れ すぎは絶対に許されません。お肉も魚も硬いとおいしくないですよね。特に、お肉・魚の塩のオーバー、お肉の火のオーバーは絶対にダメなんです。焼きについては、見た目も大事なんですが、優先順位としては「おいしいかどうか」が一番にきます。迷う時には、8割で留めさせて確認し、必要に応じて修正していきます。

時間よりも味わいを大切に。
慌てずゆっくり仕上げていく

時間よりも味わいを大切に。 慌てずゆっくり仕上げていく

披露宴の料理は約100名分を一気に出します。塩辛い、焼きすぎてしまった場合、修正がきかないんです。合格ライン以下のものは「ゆっくり時間をかけてもいいから、慌てずに仕上げなさい」とスタッフには言っています。その分、サーブするタイミングが少し遅れてしまいますが、まずいものを出すよりはいい。5分遅れることで披露宴がおしてしまい後で怒られますが、それぐらいがちょうどいいと私は思っています。失敗するよりは。

時代と共に変化し続けていく

変わっていくもの、変わらないもの
そのどちらも大切にしたい

変わっていくもの、変わらないもの そのどちらも大切にしたい

私の料理への考え方は変わらないと思うのですが、時代は変わっていきますよね。時と共に変化する「おいしい」に対応する料理を作っていかなくてはいけないと思っています。例えば、一口に真鯛のポワレと言っても、以前はオイルで焼いていたのがオリーブオイルやバターになったり、オーブンで焼いたり…。調理法や技術の使い方も変わっていきます。ただし、変わらないものもあります。それは、お客様に「おいしい」と言っていただける料理を提供するのが自分の仕事であるということ。変わっていくもの・変わらないもの、そのどちらも大切にしていきたいですね。

料理は伝わらなければ意味がない
伝える相手に合わせて自分も変わって行く

料理は伝わらなければ意味がない 伝える相手に合わせて自分も変わって行く

私と同じ考え方のスタッフが多いのが、アルカンシエルのいいところだと思っています。
自分の考えをわかってくれるプロデューサーがひとりでもいれば、お客様に伝わるんですよね。それは安心しています。今の高校生の子が5年後には結婚するかもしれない。その時には、彼女たちのテンションが上がるようなデザートやオードブルを作っていくことになります。スマホでカンタンに写真が撮れるようになっているので、今まで以上に見た目にも楽しい料理になっていく予感がします。

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